さもありなん
砂の上で横たわっていた彼女の靴は、砂で薄汚れてしまっていて、凛としていたはずの彼女の靴は酷くアンバランスに見えた。

ツルツルとした素材のそれについた砂を無造作に指で拭き取ると、片手に持って立ち上がる。

ふと顔を上げて彼女を見ると、こちらを睨むようにして両手に拳を作ったまま立っていた。

「え…怒って…」

「あのねー!?」

不機嫌そうに空を見たまま、それでもこちらに向かって彼女が叫んだ。

「……やっぱり何でもないー!」

深呼吸をしてから手をひらひらとさせて、もう一度叫んだ彼女は今度は頭を抱えてしゃがみこんだ。

「…何を、しているんです」

「何も」

「…ほら、早く靴を履いてください。汚れてしまってますよ」

何故だか少し不機嫌そうに屈んだままの彼女の前に、靴を並べてやれば、彼女がようやく顔を上げた。

「…ありがとう」

並べられたそれは、先ほどのように繊細に、それでも凛としているようで。
改めて自分の履いている靴とは何でこうも違うのだろうと、不思議になった。






< 5 / 27 >

この作品をシェア

pagetop