アイドルだって、恋したい!!
プロローグ

1-1

「御蔭っ!! 朗報だ!!」


楽屋に、私のマネージャー・安藤が駆け込んできた。


「なぁに? 安藤」

「大手企業のCMのオファーがきたぞ!」

「オファー?」

「ああ。勿論、このオファー引き受けるよな?」

「……ええ」


CM、か……。
これで、10本目じゃない。


「いやー、新人アイドルの御蔭が、ここまで成長するとはな!
 嬉しい限りだよ」

「……ありがとう」

「御蔭、もっと喜んだらどうだ?」

「そうね……」


CMを引き受けたら、また忙しくなる。
そうしたら、また自由が奪われる……。


「安藤、1人にさせてくれるかしら?」

「ああ、悪い。急に入ってきてしまって」


安藤は、楽屋を出て行った。


「はぁ……。また仕事が増えた……」


小さく溜め息をつく。
だってそうじゃない?

私が欲しいのは、仕事じゃないのよ。

仕事じゃなくて……
自由――。


「なんで私、アイドルなんかになっちゃったんだろ?
 スカウトされたから軽い気持ちで事務所に入ったけど……
 まさかこんなに売れっ子になるなんて」


不覚。そう、不覚。
そのひと言に尽きたわ。

自由が欲しい。

『芸能人』っていう肩書きに縛られたくない。
普通の高校生がしてるように、友達と遊んで、部活して、恋もして……。

そんな生活を送りたい。

でも、私は欲張れない――。
なら、どうすれば?

そう考えた時、答えに辿り着いた。


「1つにしぼっちゃえばいいのよ……」


欲張れないなら、1つにしぼればいい。
私、天才かも。あったまいい〜。


何か1つしたいことと言えば、何かしら……?


「う〜〜ん」


遊ぶこと? 部活すること?

やっぱり、私が一番したいのは……一番したいのは……


「『恋愛』だわ」











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