遠くて近い、貴方の存在。
出発
――――――――…
『ちょっと、美紗!まだなの?夕菜(ゆうな)ちゃん、待ってるわよ。』
『はーい、ちょっと待って!あれ、私差し入れどこにやったっけ!?』
待ちに待ったVallFleaライブへ出発間近、恭太への大事な差し入れが見当たらない。
『嘘…なんでないの…?』
私が泣きそうになっていると、お母さんが痺れを切らしてやって来た。
『何ぐずぐず言ってるの。恭太に渡す差し入れなら、リビングに置きっぱなしよ。』
『あ…。そうだっけ。』
そうだった、昨日買ってきてそのままリビングに忘れて来たんだった。
私は暴れやすくもオシャレな服を着て、差し入れを忘れずに持ち、外で待つ夕菜の元へ向かう。
『じゃあ行ってきます!』
『気をつけてね。首がもげるまで暴れてくるのよ!』
お母さんも昔は立派なバンギャだった為、私がこうしてヴィジュアル系と呼ばれるバンドのライブに行く事を快く賛成してくれる。
最後にはお決まりの『首がもげるまで暴れて来い』という台詞がつく程だ。