いっこうえの先輩。
バスクラリネットを教える先輩は珍しくも男の先輩だった。
めがねをかけていて、すごくスラッとした先輩だった。
身長も高いし…170ぐらいあるのかな…
かっこいい…
もしかして舞歌がいってた先輩って…
「えっと、クラリネット初めて?」
と聞かれ、とっさに「は、はい!」と答えた。
やばい…かっこいいなんて…
「えっとじゃあ、下唇かんで…そう。それでコレ咥えて?」
下唇を噛み、マウスピースというものを咥えた。
「これに息をふいてみて。」
ふーっと息を吹いてみたけれど
息がつまるかんじでなかなか音がでない。
どんなにがんばってもできなかった。
ふーっ!ふーっ!
と力んで吹いていたら
「あ、力ぬいて、もっと楽に。ふー…ってかんじで。」
「はい…」
こんどは力をぬいてやってみた。
息が通るようになった。
けれど音はでない。
「えっと…ちょっと貸して。」
と私が咥えていたマウスピースを―――!
プーっと音をだして
「こうやって吹く。やってみて」
「あ、はい…」
頭真っ白。
だって今のって、か…間接キスってやつだよね!?
でも、そんなの誰にでもやるよね…
ちょっぴり落ち込んだ。
あれ?何落ち込んでるの!?私。
だってさっきあったばっかりで…
「どうしたの?」
とつぜんの先輩の問いかけに
「はぁいっ!」
と声が裏返る。
は…はずかしい!
でも、これは、ただそれにドキドキしてるだけ。
だって、こんな気持ち早すぎる。
「大丈夫?」
「え、あ、大丈夫です。はい。」
またちょっと裏返った声に「すみません」
と軽く笑った。
「うん、じゃあ吹いてみて。」
マウスピースを口に咥えようとすると
「あ、髪の毛―――…」
スッと伸びてくる先輩の手が、私の頬を掠めた。
「―――!?」
ドキン!
すごい。いっきに心拍数があがった。
息が少しだけ荒くなる。
「髪の毛。口にはいってたよ?」
「あ、や、はい。ありがとうございます…」
やっばい、今、先輩の手が…!
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