ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
Memory04 雨が止むのを待つ間
目の前で彼女の部屋のドアが閉まる。
彼女が僕に言った最後の言葉は「じゃあ、そう言う訳だから」だった。
なんて素敵な言葉なんだろう。
ここまで開き直られると呆れるよりも感心してしまうよ。
彼女の部屋がある五階からエレベータに乗って一階まで降り、管理人室の前を通ってマンション出入り口まで行く。
さて、ここからどうしようか?
先ほどから雨が強く降り出している。
僕は傘を持っていない。
今朝は雲ひとつなかったというのに……。
まったく、今日はなんて一日なんだ。
振り返って管理人室を見てみると、まだ明かりが点いてはいるものの窓は閉じられカーテンで中は見えない。
時刻は午後八時を過ぎたところだ。
傘を貸してくれ、とは言えないよな。
まして彼女に頼むなんて、もっと無理。
僕らはさっき別れたばかり。
別れた、というのは「また明日」ってことではなく男女関係の解消、つまり僕と彼女はもう完全に他人な訳。
ね、言えない。