ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
彼女と一緒にシンセサイザのセッティングをしてから、サブ・ミキサーのモニタをチェックする。

特に問題が無かったので、メイン・ミキサーの近くで打ち合わせ中のPAエンジニアに「お願いします」と告げると、僕はライブハウスの外に出て煙草を吸った。

僕の仕事は、ほぼ終わりだ。

複雑な同期システムを組んでいるわけでもない。

トラブルが起きる可能性はほとんど無いだろう。


この日は彼女の単独では初の仕事。

デビューしたばかりの新人アイドルのバックバンドだ。

ピアノで育った彼女は、まだシンセの勉強中。

だから僕はローディー兼マニュピレータとして彼女に帯同していた。

シンセとその周辺システムの搬入、搬出、セッティング、演奏中のシンセ・コントロール、それが僕の仕事だった。
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