ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
「やっぱり。絶対煙草吸ってると思った」ミルクティーを僕に差し出し彼女が言う。
「あれ? モニタチェックは終わったの?」
「個別のは終わったよ。ボーカルの入り待ちみたい」
「ふーん、アイドルの娘、まだ来てないんだ? ゲネプロも無いし……、大丈夫なのかな?」
ゲネプロと言うのは本番と同じように進行する通しリハーサルのことで、大きいイベントだと通常は一日前に、小さいイベントでも当日に行われたりするのだけど、それすら無いという。
まあ、バンドメンバーは大丈夫だろう。
心配なのは主役であるアイドルだ。
「名前も知らないアイドルだし。そんなものかもね」
彼女に貰ったミルクティーを二口ほど飲んでから、二本目の煙草に火を点ける。
「一応、スタジオでリハはしてるからね。大丈夫だよ」
彼女は特に緊張している様子もなく、遠足前日の子供みたいに目を輝かせていた。
ふと空を見上げると、澄んだ秋空に小さな白い雲がひとつだけ、ぽつんと僕らの真上に浮かんでいた。
僕は、右手の薬指が疼き始めるのを感じていた。
「あれ? モニタチェックは終わったの?」
「個別のは終わったよ。ボーカルの入り待ちみたい」
「ふーん、アイドルの娘、まだ来てないんだ? ゲネプロも無いし……、大丈夫なのかな?」
ゲネプロと言うのは本番と同じように進行する通しリハーサルのことで、大きいイベントだと通常は一日前に、小さいイベントでも当日に行われたりするのだけど、それすら無いという。
まあ、バンドメンバーは大丈夫だろう。
心配なのは主役であるアイドルだ。
「名前も知らないアイドルだし。そんなものかもね」
彼女に貰ったミルクティーを二口ほど飲んでから、二本目の煙草に火を点ける。
「一応、スタジオでリハはしてるからね。大丈夫だよ」
彼女は特に緊張している様子もなく、遠足前日の子供みたいに目を輝かせていた。
ふと空を見上げると、澄んだ秋空に小さな白い雲がひとつだけ、ぽつんと僕らの真上に浮かんでいた。
僕は、右手の薬指が疼き始めるのを感じていた。