ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
ステージが無事に終了してから一ヶ月、彼女の仕事は少しずつ増えていた。

いつか彼女は大きな風に乗って空に舞い上がるだろう。


彼女が弾くピアノはいつもやさしかった。

心に沁みこんできて、そっと包みこんでくれる、そんな感じ。

けれども、やさしさが悲しく感じてしまうことだってある。

それは甘い物が嫌いだと言いつつ、バレンタインデーにはチョコを欲しがるくらい身勝手な僕の心が、彼女に嫉妬していただけだったのかもしれない。


まるで、暗い海の中に僕ひとりだけが取り残されていくように感じていた。
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