ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
我ながら、最低な男だな、と思う。

例えば、辞書に僕の名前を見つけたならば、そこには『器の小さなつまらない男』と書かれているだろう。

彼女を嫌いになりたくない、重荷になりたくない、この時はそう思っていたけれど、裏返してみれば、彼女に嫌われたくない、重荷だと思われたくない、そういうことなんだ。


自分が居なくても、平気だろう? と言う僕に、彼女は予想以上に取り乱した。

ポロポロと涙をこぼし、


「ずっと一緒だったから頑張れたんじゃない!」


「隣に居てくれるから平気なんじゃない!」


「あなたが一緒だったから!」


と泣き叫ぶと、まるで壊れたレコードの様に何度も僕の名前を連呼し、そして、その場に崩れ落ちた。

暫くしてから彼女は「ごめんなさい」と一言呟いた。


彼女は何も悪くはない――それだけは解っていた。

それだけしか解っていなかった。
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