ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
公園前の並木通りを、沈黙を守ったまま歩いていく。

その先に見えるT字路が僕らの別れ道だ。

僕は左へ、彼女は右へ。

彼女が歩みを遅くする。

僕もそれに合わせる。

彼女がもう一度「別れたくない」と言えば、僕は。

きっと僕は。


冬の足音が近づく交差点で。


僕らは向かい合う。


彼女は僕の手を離さない。


けれど僕は。


けれども僕は。


ふたりの未来を話さない。


彼女の言葉をただ待ってみた。


永遠だけが漂っていた。


三つ数えて、


彼女が求めるこの手を閉ざして、


目を逸らして、


背を向け、


逃げた。


彼女から。


逃げ出した。


全てから。




その先はよく覚えていない。

気がつくと駅の近くでぼんやりとひとり立っていた。


そのまま、まっすぐに家へ帰る気分にもなれず、駅前のドーナツ店に入って、時間を潰した。

僕の嫌いな甘いドーナツを食べて。

彼女の好きな甘いドーナツを食べて。
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