ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
いつからか、空を見上げるようになっていた。

飛ぶ鳥を眺めるようになっていた。

鳥にだって羽根を休める場所がある、なんてことを考えもしなかった僕は、ただただ、自由に空を舞う鳥が、その背中の羽根が羨ましくてしかたなかった。


幼かった頃、飼っていたインコが逃げてしまった事がある。

僕が外で鳥かごを開けたからだ。

親にどうしてそんなことをしたのか、と聞かれた僕は、鳥が空を飛べないなんて可哀想だ、そう答えたらしい。




「今だって遠距離みたいなもんやし、変わらへんよ」




久しぶりのデート。

別れ際にそう言った僕。

何も言わず微笑んだ彼女。


お互いの家までの距離は変わらないのに、心の距離まで遠くなり、会わない期間が長くなり、電話での会話の時間は短くなっていた。


零れる溜息を拾い集め、心の隙間に詰め込む僕を、沈む夕陽が笑っていた。
< 3 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop