ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
「手紙が入っていたわけでもないし、名前も知らへんから」


「振られたわけか」


「これって僕が振られたんですか?」


「知らん」


「知らん、って」


「今日は飲むか!」


「未成年に向かって言うセリフとは、とても……」


「いつも飲んでるやん!」


「そうやけど」


「あたしは振られたからなぁ」


「……そうなんですか?」


「あんまり驚いてないなぁ。やっぱり知ってるんや? あたしの噂」


彼女が職場の既婚者と付き合っているという噂のことだ。

ふたりの関係は不倫ということになる。

よくある話だ。


パートのおばさん達は、影で彼女のことを『アバズレ』などと言っている。

特に悪意があるわけではないと思う。

ワイドショーをネタにして盛り上がる、そのくらいの気持ちなんだと思う。

それが解っていても、その言葉を聞く度に僕は、何故か彼女の良いところばかりが思い出されて、表情を曇らせていた。
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