ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
ベッドの上のブランケットを取って彼女の肩に掛けた。


これは同情か? 同情だろう。


自問自答しながら、失礼なことだ、そう思いながら、それなのに僕は、後ろからそっと彼女を抱きしめる。

幼稚で、拙く、甘い、そんな心で。


「優しくするのは好きな女だけにって、そう言うたはずやで?」


うつ伏したまま彼女が言う。


怒っているような、でも優しく子供を諭すような、そんな声で。


「すみません。起こしました?」


「答えて」


「……好きなひとには三倍やさしくします」


「アホやな君は……」


彼女は僕の手を解くと振返り、「ガキのくせに」と言ってから少し微笑んで、僕の首にその手を回した。
< 38 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop