内緒の恋心
「ちょっと早かったかな」
時間は11時45分。
仕事が忙しい佳と、平日にランチを食べることは結婚して4年、1度もなかった。
「パパとお昼ごはん、うれしいね〜」
と、隣に座らせた息子に話しかけながら、本当は私が嬉しかったのだ。
5分もしないうちに
「ママ、おなかちゅいた」
‥‥そうだよね。
お水だけではごまかせないし、早めに頼んでもいいのだけど、佳が来た時に食べ終わってたりしてると‥‥絶対遊びに入る。
少し考えてから、私はカバンからカラフルなアルミホイルにまかれたお菓子を1つ取り出した。
「パパが来るまで、これ食べようか?」
そっと差し出すと
「うん、たべゆ!」
私から大喜びでお菓子を取り上げた。
そして‥‥なにげなく、顔を上げたとき
固まってしまった。
斜め前に座っていた男の人の手が、めちゃくちゃ好みだったのだ。
私はいわゆる手フェチ。
‥‥
‥‥‥
めっちゃ、好み。
凝視するわけにもいかず、子供の相手をしているように見せて‥‥チラ見。
何回見ても
「好み」
‥
‥‥
‥‥‥いやいや、この角度だから素敵に見えるんだ。
そう思い込もうとしたとき
「!!」
彼がコーヒーを一口飲む。
その手の形が‥‥‥もう、たまんないよね。