内緒の恋心


何?あの笑顔‥‥本当にたまんないよね。

ああ、きっと彼は子供が好きなんだろうな。

だから私と息子のやり取りを見てあんなに優しく微笑んでいたんだわ。

‥‥もしかして、パパさんなのかな?

イケメンで、腕のラインが素敵で、手がカッコ良くて、子供好きなんて‥‥今のところだけど‥‥なんて素敵な人なのかしら。

ああ、妄想が広がるわ。


もう一度見たくて視線を彼の方に向けると、彼は腕時計をちらりと見た。

その仕草もハマる。

そして、席を立ち、カバンを持つとビルホルダーに入っていた伝票を手に取り会計まで歩いて行ってしまった。

そっか、もう時間なんだ‥‥。

ちょっと寂しさを覚えつつ、彼の背中を見送っていると会計のところで伝票を差し出す。

そして支払いの計算をしている僅かな時間で‥‥こちらを‥‥見た。


やっぱり、かっこいい人だな。

そんなことを思いながら少しの間、見つめあっていた。

‥‥多分。

距離が離れているから、彼が本当はどこを見ていたのかなんてわからない。

だけど、その瞬間は胸がときめいていた。


彼がお店を出て、子供のお子様ランチを注文すると、私はさっきまで彼が座っていた席に目を向けた。

‥‥今まで色々な人を見て来たけれど、あんなに理想の手の人は初めて見たな。

彼の手を、腕のラインを思い出しながらやっぱりときめいている自分に気が付く。


短い時間だったけれど‥‥これは『恋』だった。

ちょっとぼーっとしてると

「パパちた!」

息子の声にハッとする。


そうだ。これからここでランチを食べるんだった。

なんとなく佳の顔を見られずにいた。


「悪い、少し遅れた」

私の前に座る佳。

「奈々、もう頼んだか?」

「え、まだ」

「そうか」

顔を上げて佳を見る。











あ‥‥やっぱり私、佳が好きだわ。








~fin~








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