この世界は残酷なほど美しい



「え…どういうこと?」



莉子は僕に詰め寄り、思い切り顔を近づけた。
トクンと鳴る心臓が聞こえた。莉子にも聞こえてしまうのではないかと焦った。



「目の前で泣いている人に大丈夫?と言ってはダメなの。人間は本当は弱いのにすぐに強がりになる。本当は大丈夫なんかないのに心配かけないようにそう言っているだけなの!」




人間は本当は弱い。
だけど周りに心配かけないようにわざと強がったフリをする。じゃあ…もしかしたら。
僕の前で泣いていた花音や、奈緒子は本当は大丈夫じゃなかったのかもしれない。
花音と奈緒子から「大丈夫だよ」と言われたから僕は安心しきっていた。

二人は誰かに助けてもらいたかったら?
僕は何をしてしまったのだろう、と強く自分を罵倒した。



でもそういうときはどうしたらいいの?
泣いてる人が目の前にいたら無力な僕は何をしたらいいの?




「泣いている人がいたら隣に座ってあげるだけでいいの。ほら、人間って寂しがり屋だから…」




莉子の言葉が過去の自分を思い出させた。
僕はあの時も小さな過ちを犯していた。




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