この世界は残酷なほど美しい
~4.未熟な青虫~
僕はずっと青虫のままで良かった。
誰かに踏まれて死んでしまう人生でも全然良かった。
だけど願ってしまったのだ。
誰よりも大きくて綺麗なアゲハ蝶になりたいって。
「…くん、りゅ…いくん…」
あぁ、ついには幻聴も聞こえるようになってしまったか。
そろそろ壊れるんじゃないかな。
人を好きなった途端こうだ。
誰かを好きになったら幻聴が聞こえるのか?
いや、そうではない?
え、でも何で僕の名前を呼ぶ声が聞こえてくるのだ?
「ねぇってば!!」
すると誰かがいきなり僕の肩を揺さぶった。
それにハッと気づく。
慌てて目を開けるとそこには夕陽色に染まった教室があった。
どうやら僕は寝ていたらしい。午前と午後の記憶もうっすらしかない。
かろうじてあるのは、朝の出来事くらいだ。
星形の折り紙に、奈緒子の告白、そして自分の気持ち。
きっと色々ありすぎて疲れてしまってたんだな。
「って…奈緒子…」