この世界は残酷なほど美しい
これ以上聞くのはやめた方がいい?
いや、ここで引き下がるのはなんか嫌だった。
「奈緒子は僕のどこが好きなの?」
「言い出したらキリがないから」
不意にもその奈緒子の発言に心がトクンと鳴った。
今まで何度か告白してくれた人たちに「どこが好きか」と聞いたことがある。
皆揃いも揃って「顔かな」と言う。
その瞬間僕は顔しか価値がないのかと思い、そう言った人たちを殴ってやろうかと思った。
でも奈緒子の言葉を言われたのは初めてだ。
思えば質問の答えになっていないのだけど何だか説得力があった。
キリがないくらい僕を好んでいる。
だからちょっとだけ生きる自信がついた。
自分自身を好んでくれる人が一人でもいるのなら、僕はその一人のために生きていける、と。
僕は頭を掻いて照れ笑いをすると奈緒子も僕と同じ笑い方をした。