この世界は残酷なほど美しい


その中で一番輝いているのは?
教えてよ。誰なの―…?



彼が何を言っているのか僕には理解出来ずにいた。
ただ脳裏には蓮のあの表情がこべりついて離れない。
僕が蓮に詰め寄ったときの苦しそうな表情。

蓮はもしかして…身を引いたんじゃないのか?



「流星、さっきから意味がわかんないことばっかり言ってくるの。蓮は聞き分けがいい奴だねとか。あたしの幸せを願ったからそうしたんだとか」



僕の背中に隠れている花音が震える声でこう言う。
その時辻褄が合った気がした。

僕はゆっくりと彼を見た。
そこには勝ち誇ったような顔をする彼がいた。
殴ってやろうか。
そう思うくらい腹立たしかった。



「詳しく教えてくれない?」




「俺は斉藤蓮に花音と別れてくれと言いました。もう一度花音と付き合いたくて。そうしたら斉藤蓮から連絡があったんです。花音と別れたってね。斉藤蓮は俺に負けたんです」




そういえばそうだった。
蓮は小さい頃から周りに気を遣い、相手が幸せになることを一番に願える奴だった。
こんなどうしようもないエリートの肩書きだけを背負って生きてる奴と違って。


蓮は花音の幸せを願ったんだ。



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