この世界は残酷なほど美しい


「そうか…雅は忙しいもんな」



「忙しいのを理由にして育児放棄しないで欲しいけどね」



皮肉な発言をすると春さんが僕の頭を撫でた。



「流星は十分成長しただろ?」



成長なんかしてないよ。
ほら、まだまだ僕は青虫さ。
僕は下唇を噛んで父さんに対する憎しみを必死に抑える。
ふとあることを思い出した。
それは奈緒子が言っていた言葉だった。



「ねぇ、春さん。日記ってさ何のために書くと思う?」



「え?日記?うーん、忘れないため?日記ならよく美羽が書いてたじゃないか」




「……え?」




僕は止まってしまう。
母さんが日記を書いていたことなんて知らなかった。
遺品を整理したときにだって日記なんて出てこなかったし…
どういうこと?
母さんは僕の知らないとこで日記を書いていたってこと?




「美羽の病室行くとよく美羽は日記を書いてた。『何書いてるんだ?』って聞いたら美羽は笑って『忘れないで欲しいから』って言ってた。」




初めて聞かされる真実。
僕は戸惑いを隠せないでいた。



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