この世界は残酷なほど美しい


蓮は携帯をパタンと閉じて僕の方へ歩いてくる。
そしてベッドに座るとパイプから軋む音が保健室に広がった。この音は小さい頃からあまり好きではない。


起き上がり蓮を真正面から見る。
その表情からうかがえるのは冗談ではないということ。
蓮は真剣な顔をしていた。



「いいか?流星。人を好きになるってことは奇跡に近いんだ。こんなにもたくさんの人間が周りにいてたった一人を好きになる。お前が一番分かってるんじゃないのか?誰かに好かれる、誰かを好きになることはすごいことなんだ。」




地球上には何十億人という人間がいて、その中にも動物、植物、さまざまな生物が生きている。
そんな中で僕たちは生まれ、恋をし、家族を作っていく。
毎日誰かに会うことが当たり前になってきている今、そういう感覚を忘れてしまっている今、もう一度自分の置かれた現状を確認してみる。

誰かに恋をする。
誰かに愛される。
誰かに振られる。
そしてまた恋をする。

それは奇跡なんだ。
誰かを好きになるという感情を神様が与えてくれたのだ。




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