この世界は残酷なほど美しい
野中くんは救急箱からオキシドールを取り出し、直接それをつけていた。
絶対それ痛いだろうな、と様子を見ているとやはり野中は「いって!」と言っていた。
野中はもしかしたら結構天然さんかもしれない。
「あのさ、野中くん。野中くんは何で奈緒子に振られたの?」
前、廊下ですれ違ったとき、野中は奈緒子に振られたと言っていた。
それがどうも引っかかっていたのだ。
ちょうどいいと思い聞いてみると野中はパイプ椅子に座り、傷口を脱脂綿で拭いていた。
「奈緒子を好きになったのは俺なんだ。入学したときからずっと好きで告白したのも俺。もしかして何か奈緒子に言われたか?」
「あ、うん。告白された」
「やっぱりな。奈緒子に告白したとき『好きな人がいるから』って言われたんだ。まぁそれでもいいって言って付き合ったんだけど」
「でも…奈緒子はあの時野中くんに浮気されたって泣いてた。振ったのに泣くっておかしいでしょ…」
僕はシーツを握りしめて下を向くと蓮が間を割ってこう言った。
「野中が浮気したのは事実だからだろ?」