この世界は残酷なほど美しい
ガランと静かになってしまった保健室。
何だか雲行きも怪しくなってきた。
はぁ…と息を吐き、一旦自分を落ち着かせた。
奈緒子は…やっぱりよく分からない。
まるで僕を昔から知っているみたいだ。
僕は奈緒子のことをよく知らないのに。
見透かされてるな…。
奈緒子にはやはり勝てないな。
莉子のこと、奈緒子のこと。
考えることがたくさんありすぎて僕の体は重量オーバーだ。
だからこんなにも疲れたのだろう。
「帰ろ…」
重たい腰を上げて誰もいない保健室を出ようとした時、目の前のドアが開いた。
「えっ?」
目の前には奈緒子がいた。
しかも僕のカバンを持って。
「あっ気分どう?大丈夫?」
僕の顔を見てにっこりと笑う奈緒子。
「うん、ありがとう。」
奈緒子は僕の何を知っているのだろう。
そして僕のどこを好きなのだろう。
蓮が先ほど「好きになることが奇跡」と言った。
だけど僕と奈緒子が出逢ったことがもう奇跡だったんだ。