この世界は残酷なほど美しい
だけど運命は大きく傾いていく。
僕たちは会話のないまま駅へと向かった。
「流星!!」
そんなとき、前方から僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
周りを見渡すとそこには大きく手を振る春さんの姿があった。とてもラフな格好をしていた春さんからは仕事帰りだろうと勝手に想像がついた。
奈緒子は立ち止まってこちらを見ている。
僕は奈緒子の隣に行き、近づいてくる春さんを待った。
「今帰りか?」
「うん。春さんは仕事帰り?」
「そうそう。久しぶりに家に帰れるよ。ずっと病院泊まりだったから。…えっとこの子は?」
春さんはそう言って隣の奈緒子を見た。
奈緒子は下を向いたまま何も言わず黙っている。
「クラスメートの奈緒子。一緒に帰ってる途中なんだ」
「へぇ……」
春さんはそれ以上言わなかった。
奈緒子をまじまじと見ていると突然奈緒子は「ごめんね!また明日」と言って足早に去って行ってしまった。
「ちょっ!奈緒子!」
急な奈緒子の態度に僕は驚きを隠せない。
すると春さんが去っていく奈緒子の後ろ姿に小さくこう呟いた。
「…あの子、どっかで見たことあるんだよなぁ……」
真実がひとつひとつ、
明らかになっていく。