この世界は残酷なほど美しい


僕の前で春さんは首を傾げながら奈緒子が去っていった道を眺めていた。
春さんと奈緒子が知り合いなわけがない。
接点など一つもないからだ。



「あのさぁ、春さん?」



「あっうん?どうかしたか?」



僕はどうしても気になっていた。春さんが前に言ったこと。
母さんが生前日記を書いていたということ。
だけど僕にはそれを見つけることが出来なかった。
あれから何度か探してみたがやはり無かった。
デスクの引き出し、ベッドの下、押し入れの奥。
手当たり次第探したけれどそれは姿を現さなかった。

息子の僕には見せたくないのだろうか?
父さんが隠しているとか?
それもあり得る話しかもしれないが、父さんは母さんの所有物を全て母さんの部屋に置いた。
だから隠すなんてそんなことするわけがないと思った。



「母さんの日記、家には無かった。誰かが持ってるとか?」




「さぁ、それは分からないなぁ。」




「春さんが持ってるってことないよね…?」




「それは絶対にない。もしあったとしたらとっくに流星に渡してるよ」




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