この世界は残酷なほど美しい
銀色の折り紙は街のネオンに反射し、僕の目を細くさせた。
どういうこと?
僕は小さい頃この折り紙をしたことがあるっていうの?
そんなの自分の記憶には無い。いくら思いだそうとしても無理だった。
記憶は僕が置き去りにした。
僕だけが成長をし、記憶はあの時のままストップしている。
「意味が分かんない…」
空っぽだと思っていた自分の体が重く感じた。
それを無理矢理動かして駅のホームへと向かう。
帰宅時間なこともあり駅にはたくさんの人で溢れていた。
だけど僕だけそこに取り残された気がして、周りが早送りしたかのように動いている。
ただぼーっと、星形の折り紙を見つめていた。
平凡すぎた僕の日常に舞い降りた真実。
それは僕を大人にする架け橋だった。
母さんが最後に残してくれた勇気だった。
そして希望でもあった。
「…母さん」
いくら呼んでも返事は無いに決まっている。
だけど未だに母さんが恋しいと思うのは僕だけではなかった。