この世界は残酷なほど美しい
息を乱して、勢いよく部屋のドアを開けた。
なんか最近全力疾走してばっかりだな。
今ならスポーツテストA判定を貰えそうだ。
余裕もないくせしてこんな冗談を言ってみる。
そんな自分が滑稽だ。
靴を大胆に脱ぎ捨て、母さんの部屋に向かう。
何故か知らないけれど足がここに向かっていた。
母さんの部屋のドアを開けるとそこには既に先客がいた。
物音を立てずに中を覗くと僕は息をするのを忘れてしまうくらい、体が固まってしまった。
何故ならば…そこには。
灯りもつけずにただ…
小さく体を丸めて泣いている父さんがいたから。
泣いている父さんを見たのは初めてだった。
なぜ泣いているのだろう。
父さんのいているところなど母さんが死んでから見たことが無かった。
すると父さんが小さな声でこう言った。
「約束…したじゃん。」
視線を落とすと床にはあの写真集。
そして散乱する母さんの写真。
「美羽…どうして僕より先に死ぬんだよ…」