この世界は残酷なほど美しい
~7.錆び付いた心の行方~



人を愛することはどれほど難しく、そして大切なことを父さんと母さんが教えてくれた。

蒸し暑さの残る初夏。
僕は必死にもがいていた。

未熟な青虫から立派な蝶へと進化できるように。


神様、どうか許してください。今まで勘違いをしていたようです。
僕は自分のことしか考えていなかった。
もっともっと周りを見れば良かったんだ。



ヒカルさんと話を終えた僕は慌てて家に戻った。
どうしても早く父さんの顔が見たくて。
だけど家に帰るとそこはあまりにも静かだった。


母さんの部屋に行くと、さっきまでそこで泣いていた父さんの姿はなく、本棚へ向かいヒカルさんの言っていたあの写真集を探してみる。
だがそこには無かった。


父さんがどこかに隠したのか?それとも。


不思議に思った俺はリビングに向かう。
するとリビングの透明テーブルの上には父さんが書いた一枚のメモが置いてあった。




“7月7日までには戻るから。家のこと頼むな”




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