この世界は残酷なほど美しい
呼び出し音が身体中を駆け巡っていく。
『…はい?』
聞きなれたはずの声なのに、初めて聞く声に聞こえた。
「父さん…今どこにいんの?」
父さん、と名前を呼ぶのも久しぶりすぎて歯痒い。
『置き手紙見なかったか?ちょっと色々考えたくて…出かけてくる。7月7日は戻るから。』
きっとそうだよね。
父さんは母さんのところに行くんでしょう?
母さんとの思い出を迎えに行くんでしょう?
だからさ、約束してよ。
戻ってきたら教えてよ。
父さんと母さんの思い出…ううん、軌跡を。
「父さんに話したいことがあるんだ。だから戻ってきたら話がしたい。」
『流星から話があるなんて珍しいな』
「そうかな?少しは成長したってことなんじゃない?じゃあ、気をつけて」
まだ全然素直じゃないけど、僕は待っているから。
父さんにとって僕はたった一人の身内で…
僕にとって父さんは僕のたった一人の父親だから。
ごめん…父さん。
今までのことを謝らせて欲しい。