この世界は残酷なほど美しい
高城渓斗。
僕はこの名前を一生忘れることはないだろう。
「…空中遊歩」
父さんの写真集のタイトル。
僕は彼から受け取ったそれを開く。
すると一ページ目にこんなメッセージが書かれていた。
“流れ星の意味、覚えてる?”
彼が莉子に残した最後のメッセージだった。
僕はそれを大事にしまい、カバンの中にしまう。
するとポケットの中にあった携帯が震えだした。
「誰だー?」
暗闇に光り放つ液晶画面。
そこには“春さん”という着信文字。
春さんから着信なんて珍しいな。
どうかしたのかな?
僕は慌てて通話ボタンを押す。
「はいはい?どうしたの?春さん」
『もしもし?流星か!?』
その声はひどく焦っていた。
「うん、どうしたの?」
『分かったんだ!前に流星と一緒にいた女の子の名前!凄い気になったから、昔のカルテを探してたらその子の父親のカルテが見つかって!そういえばあの子、美羽と仲が良かったんだ!』
「え、ちょっとなに?意味が分かんないんだけど……」
『その女の子の名前は馬渕(まぶち)奈緒子ちゃんだ!!』
もう少しで七夕がやってくる。これはきっと母さんが残していった最後の魔法だった。