この世界は残酷なほど美しい
気づいたときには走っていた。
先ほどの春さんとの電話の会話を思い出す。
『馬渕奈緒子ちゃんのお父さんが肺炎で少しの間だけど入院してたんだ。美羽の隣の病室で』
馬渕奈緒子。
初めて聞く名前にしてはおかしかった。
『よくお見舞いに来てたし、それに仲良く美羽と喋ってたんだ。』
キミは一体僕のなに…?
『流星と駅で会ったとき一緒にいた女の子いるだろ?あの時は分からなかったけど、左目付近にあるホクロで分かったよ。』
あなたは、誰?
『きっと彼女なら何か知ってるはずだ』
僕に何を隠しているの?
僕は春さんと電話を切ったあとにある人に電話をした。
「病院の屋上に来てほしい」と。
急いで病院に向かう。
薄気味悪い病院は好きではない。
だけどそれでも走っていく。
屋上に繋がるドアを開けるとそこには開放的な世界があった。
「流星くん、こんな場所に呼び出してどうかしたの?」
屋上では僕を待っていた人影がぽつり。
呼吸を整えて僕は近寄っていく。
「初めまして、馬渕奈緒子さん。ううん、乾奈緒子さん。」
あの日母さんな託したものが今、明らかとなった。