この世界は残酷なほど美しい
~8.星に託した想い~
目の前には夏が近づいてきて、毎日毎日気温は上がっていく。寝苦しい日々が続くのかと思うと、やはり夏には良いところがないと思った。
だけどあの日は、肌寒いと感じるくらい風が強く思い切り僕たちの体を吹き抜けていった。
でもあの時、僕たちには吹き抜ける風と同じくらい冷静さが必要だった。
「奈緒子は僕の…何者なの?」
「なーんだ。もう分かっちゃったのかぁ。残念」
奈緒子は溜め息混じりにこう言った。
僕の何を知っていて、何を隠しているというのだ。
僕は奈緒子が怖くなった。
だからあんなにも僕の視界に映ることばかりしていたのか。
僕を、知っていたから。
「隠さないで教えてよ。奈緒子が知っている全てのこと」
「流星くんは覚えてないのでしょう?私のこと」
僕に一歩一歩近寄る奈緒子。
そして真ん丸な瞳で僕の顔を覗き込んだ。
その丸い瞳が空に浮かぶ月と一致した。
「流星くん、遊ぼうよ」
「………え。」