この世界は残酷なほど美しい
ぐるぐる、ぐるぐると頭が回転していく。
行きついた場所は過去の記憶だった。
そう、僕が8歳の頃の記憶。
真っ白な病院。
揺れるカーテン。
色鮮やかな花。
窓際のベッド。
ドアから覗く人影。
笑ってくれる人間。
母さん。
母さんを見つめる僕。
僕…僕、僕…
「流星、奈緒子ちゃんと遊んできたの?」
奈緒子、奈緒子?
誰、キミは…、
奈緒子?誰?
誰…キミは…奈緒子。
「………キミは」
「思い出してくれた?私ね、ずっと流星くんに逢いたかったの。この日が来るのを昔から待っていたんだよ」
そうだ。
たった今思い出した。
過去に知り合った女の子の残像が奈緒子と重なり合った。
僕と奈緒子は8歳の頃に出逢っている。
僕はすっかり忘れてしまってたようだ。
母さんが死んでから過去を封印した僕は、今さらになって過去を掘り返すなんて思ってもいなかった。
だけど、正直。
「でも…僕は奈緒子と遊んだ記憶がほとんど無いんだ」
奈緒子のことは覚えていなかった。