この世界は残酷なほど美しい
その質問の返事に戸惑っていると野中くんが私に小さな声でこう呟いた。
『俺、奈緒子に一回も名前呼ばれたことないんだ。お前知ってたか?接点もない坂井流星のことは気安く流星くんって名前呼ぶしさ。…まぁ初めから無理矢理だったし、しょーがないな。じゃあ、お別れってことで』
プツッと電話の切れた音が耳の中で何度も再生をする。
私、野中くんのこと一度も名前で呼んだこと…無かった。
気づかなかった、知らなかった。
無意識だったから。
それをずっと野中くんは気にしていたの?
じゃあ教えてくれたっていいじゃない。
罪悪感が私に押し寄せる。
野中くんごめんなさい。
だけど私の願いを叶えるのにはあなたを犠牲にするしか無かったの。
こんな私と付き合えて嬉しかった、楽しかったと言ってくれる?
そして次の日、流星くんは野中くんを殴った。