この世界は残酷なほど美しい
奈緒子で良かった。
こんなにも純粋で真っ直ぐで、そして人間らしい奈緒子で良かった。
奈緒子は僕たちの想い出をきっと綺麗なまま大事にしてくれただろう。
感謝してもしきれないよ。
「流星くん、私ね…ずっとずっと言いたかったことがあるの」
涙を流して僕を見つめるその瞳には僕しか映っていないはずだ。
そんな視線が僕が莉子を見つめる視線にどこか似ていた。
僕も莉子をこんな風に見つめているのだと思うと体に電気のような衝撃が走っていく。
「奈緒子?」
「私、流星くんがずっと好きだよ……」
体の次は心へ。
奈緒子は僕をこんなにも想ってくれている。
僕は下唇を少し噛んでゆっくりと目を閉じた。
母さん、僕は…
どうしたらいいのでしょうか。
…でも、僕は…。
「……ごめん、奈緒子。」
この言葉以外答えは無かった。