この世界は残酷なほど美しい
夕暮れの空が夜空へと変わっていくように僕の心の中も変わっていった。
それは満天の星空で、母さんがどこからか見守ってくれているように感じた。
まだ蝶々になれていない僕は、早くこの広い世界を飛んでみたいと強く思う。
だけどゆっくりでいい。
成長していく過程を楽しみたいから。
僕は一歩奈緒子に近づいて、頬に伝う涙を指先で軽く撫でた。それはすぅっと僕の肌へ浸透していく。
「もしさ、僕が奈緒子に出逢ってなかったら、ずっと狭い世界で生きてたと思うんだ。」
「…うん。」
「いつになるか分からないけど、もっともっと自分に余裕が出来たら、今度は僕が奈緒子の救世主になるから…」
「もう…とっくになってるよ…」
また涙を流す奈緒子。
拭いてあげたのに意味がないじゃないか。
でもいいんだ。
涙を流すことは悪いことではないから。
すると奈緒子は持っていたカバンの中からある物を取り出し、僕に渡した。