この世界は残酷なほど美しい
~10.この世界は残酷なほど美しい~
街が僕だけを置いて夏模様にしていく。
こんな季節になると冷たいカルピスが飲みたくなるのは僕だけかな。
―…7月7日。
この日は思ったより早く訪れた。
奈緒子から母さんの日記を受け取った日からどうしても学校に行く気力が沸かなくて。
母さんのいない時間を必死に埋めるかのように、僕は母さんの部屋に入り浸った。
蓮からも、奈緒子からも心配されたけど僕はちゃんと生きていたし、死のうだなんてそんなこと思ってはいない。
蓮からの電話を出たとき「良かった、生きてて」と言われた。
僕が生きているだけで喜んでくれる人がいたなんて、と改めて感じた僕はひどく感激をした。
生きていれば必ず光は射す。
そう母さんに教わった気がする。
そして今日。
今日は僕にとって忘れられない日だ。
あ、間違えた。
僕、だけじゃない。
父さんにとっても大切な日だ。