この世界は残酷なほど美しい
手には花屋さんが彩りよく包んでくれた季節の花束。
「今日は特別」と言って小振りな向日葵を入れてくれた。
良かった、あの人向日葵好きなんだよね。
アスファルトを歩いていくと、見えてきた。
そこに母さんは眠っていた。
海の見える小さな街で。
「ここにいるよ」と訴えかけるように。
墓地に入り、母さんのお墓を目指す。
するとそこにはすでに父さんの姿があった。
「…父さん」
父さんは母さんのお墓を愛しそうな眼差しでずっと見つめていた。
その横顔に胸が痛くなる。
父さんのそんな姿を見慣れていないせいか。
父さんはいつもこうやって母さんのお墓参りをしていたんだ。
一人で…
語りかけるように。
「流星か。悪いな、呼び出したりして」
「別にいいよ。だって行く予定だったし。それに言ったでしょ?話があるからって」
目の前には石像に刻まれた“坂井家”
母さん、一年ぶりだね。
元気にしてた?
ねぇ、少しは成長したかな。