この世界は残酷なほど美しい
季節は確か春だった。
美羽が「夕陽が見たい」と言ってこの海に来たのだ。
美羽は俺に歩みより、ギュッと手を握る。
「どうかした?」
そして美羽はそのまま俺の手をお腹に当てたのだ。
最初「え?」と思ったがすぐにその意味が分かった。
それは…つまり。
「子供…できたの。」
「え!嘘!!」
ずっと欲しかったんだ。
美羽との子供。
「本当だよ。今4週目。」
美羽は優しく笑う。
それはもう母親の顔だった。
「…俺…ヤバい…泣きそう…」
まだお腹は大きくないけれど、この中に俺と美羽の赤ちゃんがいるって思うとひどく感動した。
全身が震えて、腰が抜けそうだった。
「雅、新しい命をありがとう。」
「何言ってんの?美羽がいたからだよ。本当に俺幸せ!!」
そして強く強く美羽を抱きしめた。
守るものができた。
愛する人が増えた。
だから一生懸命生きていく。
俺は心から幸せだった。