この世界は残酷なほど美しい
まだ何か言いたいことでもあるのだろうか。
こんなことを一瞬でも思ってしまう自分がいたなんて、とこの時初めて気付いた。
やはり僕の体には父さんと同じ血が流れているということか。
“冷血人間”
それは僕にも言えることかもしれない。
「…どうかした?」
「さっき言ったことは本気だから。私はずっと流星に逢いたかった」
「今日の奈緒子は何だかちょっと変だね。体に悪いものでも食べたの?それか野中くんのこと?何故そんなに僕に構うの?」
そう僕は言うと奈緒子は鞄を持つ手の力を強くした。
下を向いて何も言わなくなる。僕はイヤホンをはめて席を立とうとした時だった。
奈緒子が震えた声でこう言ったのは。
「約束、だから。私はずっと探してたの。流星くんを」
「…意味が分からないよ?僕は奈緒子みたいに頭が良くないから、ちゃんと言ってくれなきゃ困る」
「言いたいけど今の流星くんには言えない。…じゃあまたね」
奈緒子は僕に手を振って目の前から去って行った。
ますます分からない。
奈緒子は僕に何を言いたいのだろう。