この世界は残酷なほど美しい
奈緒子は僕に歩みより、星形の折り紙を差し出した。
もちろんその色は銀色。
「気をつけてね…行ってらっしゃい」
「奈緒子、またね。行ってきます」
みんなに大きく手を振り、僕と父さんは搭乗口に向かった。
これから僕たちはそれぞれの道を歩いていく。
蓮は法学部に、花音は短大に、そして奈緒子は…
あれ…そういえば奈緒子の進路聞いてなかった。
また電話をして聞こう。
飛行機に乗り込むと隣にいた父さんが僕にこう言った。
「飛行機に乗ると母さんに逢える気がするんだ」
「母さんに逢えたら何て言おう?」
飛行機が飛び立つと、空に向かって高く昇っていく。
窓から空を見るとそこには一言では言い表せないくらい…
蒼い蒼い空が広がっていた。
そこはまるで楽園のようで。
僕の知らない世界は…
残酷なくらいに、
こんなにも…美しかった。