この世界は残酷なほど美しい
その匂いは甘酸っぱいレモンだった。
しばらく僕はその場で立ちすくんだまま、動くことが出来ずにいた。
だから電車を二本見送ることとなった。
ベンチに座り彼女のことを思い出す。
「…さっぱりだ。」
何度考えても彼女の言っていた言葉が分からないでいた。
だけど“天体観測”の文字を見たとき、忘れていたことを思い出した。
僕は小さい頃よく天体観測をしにちょっと離れた場所まで旅に出かけていた。
通称、自分探しの旅。
カメラをぶらさげて、父さんの職業を理解しようとしていた。だけどカメラの良さは分かったけど母さんが死ぬ間際まで携わりたいとは思わなかった。
結果が出てからはもうしなくなったけど何だか久しぶりにしてみたくなった。
「帰ろう…」
夕陽が傾いていく。
僕はiPodのボリュームを一つ上げて電車に乗り込んだ。