この世界は残酷なほど美しい
体は成長していても心が成長していなかった。
だからこんなにも自分に余裕が無いのだと思う。
父さんを見るとあの時の記憶が駆け巡り怒りが溢れ出す。
これが僕にとって喜怒哀楽の“怒”だ。
「…何してんの?」
「今からちょっと仕事でヨーロッパの方に行くから行ってきますって言いに来てたんだ。しばらく家を空けるけどよろしくな?」
家に帰ってこないのは日常茶飯事じゃないか。
今更改まって言われても機嫌を損ねるだけだよ。
親なのに何にも分かっていないんだね。
父さんはキャリーバックを持ち、部屋から出て行った。
ドアのしまった音を聞いた瞬間、体から一気に力が抜ける。
足を手で抱え込み座った。
そして母さんの遺影写真に目を向けた。
こちらを向いて笑う母さん。
いつの間にか僕は8歳の頃に戻っていた。
「流星っていう名前の由来はね、流れ星からきてるの。なぜだか分かる?」
母さん、僕は…。
「流れ星ってね、誰かの願いが叶う頃に流れるの。」
…どれだけ母さんが幸せだってことに気づいていなかった。