この世界は残酷なほど美しい
満員電車に揺られて数分後、僕と蓮は学校のある駅に着いた。今日も相変わらず苦しかった。だから通勤ラッシュの電車は好きじゃない。
でも卒業までこれがあと一年もないと思うとどこか寂しかった。
「流星くん、おはよう」
改札口に出ると挨拶してきたのは奈緒子だった。
僕の頭の中を昨日奈緒子が言った言葉が駆け巡る。
寝る前に何度か言葉の意味を考えたりもしたが、納得できる答えは見つからなかった。
「おはよう、奈緒子」
「あれ?委員長と流星ってそんなに仲良かったっけ?」
そうやって茶化してくるのは蓮しかいない。
「…別に挨拶くらいするよ。」
と僕が言うと奈緒子は笑ってこう続けた。
「私、自分に素直になろうって思ったの。」
また、意味の分からないことを…と奈緒子を見ると歯並びのいい歯を見せて笑った。
奈緒子の笑顔が嘘がないように思えた。
きっと彼女は作り笑いなど好まないのだと思う。