この世界は残酷なほど美しい


視線を床に落とすと、机の上に置いてあった携帯が震えだした。
鳴るたび振動が体に伝わってくる。
携帯を見るとそれは着信だった。
相手は…花音だった。


何故花音から着信が?
滅多にかかってこないのだけど。
急用かな?
僕は通話ボタンを押して携帯を耳に当てた。



「もしもし?」



『…流星?』



花音の声はあまりにも弱々しかった。
初めてというくらい元気のない声。
今にも消えてしまいそうだった。



「どうかした?」




『…そこに蓮いる?』




「うん、いるよ?」



ちらりと後ろを見ると体を伏せて寝ている蓮がいた。
僕が何故今まで蓮と話さなかったのは、蓮は寝ているときに話しかけられるのが大の嫌いだからだ。
一度それで喧嘩したことがある。蓮は寝起きのとき、機嫌が悪い。
だから今までそっとしておいたのだ。


あぁだからそれを知ってる花音が僕に電話をしてきたのか。





『ねぇ、流星……』




「なに?」




好きという感情がずっと無くならなければいいのに。
そうしたら誰も涙を流さないと思う…





『蓮に別れよって言われたの…』




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