この世界は残酷なほど美しい
~3.太陽が照らす先には~
あんな未来を誰が予想しただろう。
それは誰しも知るはずが無かった。
隣で静かに泣く花音を僕は肩を抱き寄せて慰めることしかできずにいた。
時々「大丈夫?」と声を掛けると花音は「大丈夫」と頷いてみせる。
そんな一生懸命な花音を見ていたらやるせない気持ちでいっぱいとなった。
蓮は何を考えているのだろう。だって花音のこと大好きだったし、蓮から別れを言うなんてそんな馬鹿な話があるわけがない。
だけど僕は知らなかった。
人間の深いところまで見ていなかった。
昼休みが終わる5分前のチャイムが鳴った。
僕は花音に視線を移し、声を掛ける。
「花音、授業始まるよ。そろそろ行こうか」
「もう…本当に大丈夫だから。」
花音は涙を拭いて僕を見上げた。
小さく笑う花音を見てまた胸が苦しくなる。
僕は「うん」とだけ言って並んで教室に向かった。