甘い涙

 運動部の掛け声。
 バッドにボールが当る音。
 吹奏楽の練習音。
 合唱部の澄んだ声。
 放課後独特な空気。
 教室の中は皆、部活へ行ったり、帰ったりしてしまって、ガラーンとしている。
 保健室へ運んでくれた日から、4日も経ってしまった。
 保健室で目覚めると、香織ちゃんがカバンを持って来てくれて、心配そうに待っていてくれた。
 「めい、大丈夫?
 すっごい心配したんだから…。」
 香織ちゃんの笑顔に、とても安心したのと同時に、杉崎くんに、学校の噂になったら申し訳ないなと思った。
 だが、何らいつもと変わらない皆に、ホッとするやら、ガッカリするやら、とても複雑な気分だった。
 それに、杉崎くんにはランチ代どころか、まだ、お礼すら言えていない。
 携帯の番号とかメアドとか知ってれば、言えるのに。
 杉崎くんを意識しすぎちゃって、直接言う勇気がなかなか出ない。
 「よ~し、頑張れ、私。」
 誰も居ないので、右手を上げながら、思わず声に出してしまった。
 
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