甘い涙

 擦れ違う人の大多数が、杉崎くんに見惚れて行く。
 『カッコイイ』と言い合う女子中学生達。
 そんな事には慣れているのか、気付かないのか、杉崎くんは普通に私に話しながら歩いて行く。
 私は道行く人の目が気になって、杉崎くんの話にも上の空だった。
 バス停に着くと
 「めいの携番とメアド教えて。」
 と携帯を取り出しながら言ってきた。
 私が携帯の操作をもたもたしていると
 「俺、やろうか?」
 と覗き込みながら言う。
 「…お願いします…。」
 私は、少し杉崎くんから離れて携帯を渡した。
 ━杉崎くんはいつも平然と近寄ってくる。
 その度に私はどぎまぎしてしまう。
 ━この位皆普通なのかな?
 人との付き合いが極端になかった私は、人との距離感がつかめずに居る事にショックを受けた。
 今までそんな事考える必要などなかった。
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