甘い涙

バスを降りると、杉崎くんに話し掛ける友達が集まってきて、私は一歩引いて歩いていた。
 そんな私の横に並び、
 「人気者を恋人にすると大変だな。」
 と碓氷くんが言った。
 ━人気者って碓氷くんも人気者なんですけど…。
 だけど私は、その後の言葉に驚いた。
 「…恋人…?」
 私は碓氷くんをまじまじと見上げた。
 「違うの?」
 「違う。違う。」
 ━そんな恋人だなんて杉崎くんに申し訳ない。
 笑いながら否定する私に
 「ふーん、昨日の夜すっげー嬉しそうに電話してきたから、そうなのかと思った。」
 前を向いたまま淡々と話す碓氷くん。
 ━杉崎くんと何話したんだろう。
  すっごい気になる。
 「あいつの勘違いか。」
 話が噛み合わないと判断したのか、そう言うと碓氷くんは足早に校門の中へと消えてしまった。
 途中で話を打ち切られた私は、一人取り残された様な気持ちになった。

 
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