甘い涙

 材料を買って行くからと、私は先に帰らされてしまった。
 家の掃除と勉強の用意をして杉崎くんを待った。
 程なくしてやって来た杉崎くんの手には、一杯の食材が入った袋を持っていた。
 ━スーパーの袋を持っててもカッコイイってどういうことだろう。
 煮込むだけだからと、私の勉強を見ながらビーフシチューを作ってくれた。
 総てにおいて手際がよく、味もとっても美味しい。
 「杉崎くんって、何でも出来て、欠点なんてないんじゃない?」
 思わず口をついて出てしまった。
 杉崎くんは驚いた顔をすると
 「俺、欠点だらけだぜ。」
 と言う。
 「めいが、俺の事欠点がないように見えてるって事は、俺の欠点を好きでいてくれてるって事かな。」
 「…?」
 私が、分からないって顔をしていたので、分かりやすく教えてくれる。
 「例えば、めいが、俺のこういう所が好き、って言っても、他の人は、嫌だ、って言う人も居るわけ。
 見方が変われば、いろいろな意見が出てくる。
 めいにだけは、俺の短所を長所として見てくれたら、すっげー嬉しい。」
 …そんな事考えもしなかった。
 
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